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2011年2月の4件の記事

2011年2月26日 (土)

TS-Eレンズの注意すべきクセ

タイトルではよくわからないかと思いますが、通常のレンズと違い、ティルト・シフトの機能を持っているがために、撮影時に注意しなければならない点がいくつかあります。

【AE撮影は困難】

AEのための測光センサーはCANON一眼レフの場合には、ペンタプリズムの後ろに、ファインダーとは別に設けられているのはご存知だと思いますが、ティルト・シフト(特にシフト)させると、正確な光が測光センサーに導かれないようで、AEに大きな誤差が出ます。

110226a
◆ノーマル/ライズ 露出比較画像 <拡大します>

上は、絞り優先AE(Av)で、均一に照らされた大きな被写体を、シフトなしとライズ(上方シフト)したものの比較です。本来なら同じシャッタースピード1/60と判断され18%グレーに写るはずですが、ライズするとこれだけ明るく写ってしまいます。

これは、ライズ方向とフォール(下方シフト)方向で対称ではなく、縦使い・横使いでも異なります。

まとめて一覧表にしてみました。(5DMarkIIで、ISO200、Avモード-f8での実測例)

5DMarkIIでの測定値ですので、他の機種でも同じような傾向になるとはいえ「同じにはなりません」のでご注意ください。

 

TS-E24mmII

  横位置   縦位置
  SS AEの露出ずれ   SS AEの露出ずれ
ライズ 12mm 1/180 -1.5段   1/10 +2.5段
ライズ 8mm 1/250 -2段   1/30 +1段
ライズ 4mm 1/180 -1.5段   1/60 0段
ノーマル 1/60 -   1/60 -
フォール 4mm 1/15 +2段   1/45 +0.5段
フォール 8mm 1/3 +4.5段   1/20 +1.5段
フォール 12mm 1.5 +6.5段   1/6 +3.5段
(参考)
ティルト 8.5° 1/4 +4段  
逆ティルト 8.5° 1/180 -1.5段  

TS-E90mm

  横位置   縦位置
  SS AEの露出ずれ   SS AEの露出ずれ
ライズ 11mm 1/125 -1段   1/20 +1.5段
ライズ 8mm 1/125 -1段   1/45 +0.5段
ライズ 4mm 1/90 -0.5段   1/60 0段
ノーマル 1/60 -   1/60 -
フォール 4mm 1/30 +1段   1/45 +0.5段
フォール 8mm 1/8 +3段   1/30 +1段
フォール 11mm 1/2 +5段   1/20 +1.5段
(参考)
ティルト 8° 1/60 0段  
逆ティルト 8° 1/20 +1.5段  

非常に複雑な傾向ですので、露出の補正を覚えるのは大変だと思います。シフト(およびティルトでも)で撮るときは、正常な状態でAEロックをかけるか、マニュアルで撮ることをお勧めします。

 

【ティルト時には画角がゆがむ/ずれる】

下の写真をご覧ください。TS-E90mmでカメラの向きを固定し、シフトせずにティルトのみ双方向にフルでかけたものです。

110226b
◆TS-E90mmティルト時の画角のずれ <拡大します>

まるでシフトしたかのように上下にずれます。これは下の図のようにティルトの軸がレンズ主面からずれていることに起因するものです。

110226c

できれば、このズレがないような設計にして欲しいものですが、パーツの共通化などでどうしてもこうならざるを得なかったのでしょう。撮影アングルを最初に決めてからティルトするとこのようにズレますので、その場合はシフトにより最終調整しましょう。

上は90mm固有のもので、24mmでは違った特性になっています。

110226d
◆TS-E24mmティルト時の画角のゆがみ <拡大します>

上下のずれよりは、パースがついてしまうことのほうが顕著に出ます。45mmは手放してしまったため比較実験ができませんし、このような現象を確認する実験も行っていなかったので確実ではないのですが、両方の特性が少しはあるものの気にならないレベルだったと思います。

以上のようなクセは、カメラ設計、レンズ設計を厳密に行えばなくせるのでしょうが、本体もレンズも今のものとは違うレベルのシステムになるでしょうから、これらのレンズの特性として写す時の工夫で回避するしかないでしょうね。

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2011年2月19日 (土)

パンフォーカスを得るティルト角の計算

ティルト・シフトレンズを上手に使うには、ティルトをマスターする必要がありますが、過去、私はかなり感覚的に行ってきました。

前々回、前回で実験を行いましたが、その際にも、過去の経験でだいたいこんなものかという感覚で合わせ、前後の角度でピントがずれていくのを確認していたのですが、普段あまり行わない距離(前回の「中距離」)では感覚がつかみにくかったり、普段使わない見下げ角では混乱しました。

前にも述べた通り、「適切なティルト角はシャインプルーフの原理に従って、三角関数で求められる」ので、数値をまとめてみました。

110219a2

ティルト角(上図:a)は、レンズ主面と撮像面の距離(≒レンズの焦点距離)(A)、撮影距離(B)、パンフォーカスにしたい面との角度(b) の3要素で決まり、焦点距離は4タイプしかないので、各レンズ毎に一覧表にしてみましょう。

表の赤バックの部分はTS-Eレンズで追い切れない角度です。 

(2012.02.06: レンズ主面と撮像面の距離は撮影距離が無限大のときレンズの焦点距離と同じになります。被写体が近いほどピントを合わせるためにレンズが繰り出されますが、下の表を作るにあたっては繰り出し量を一様にして計算しています。従って下の表は実際は近距離では角度が大きく、遠距離では小さくなるのですが、それもティルト回転が主点で行われるという前提に立ったものですので、そもそも主点がティルト回転の中心にはない当レンズでは厳密な計算はできません。あくまで目安とお考えください)

 

焦点距離:90mm 繰り出し量を10mmとしてAを100で計算 

見下げ60°(b=30°)
距離 m ティルト角 °
0.5 6.6
0.6 5.5
0.7 4.7
0.8 4.1
0.9 3.7
1.0 3.3
1.2 2.8
1.5 2.2
2.0 1.7
3.0 1.1
4.0 0.8
5.0 0.7
見下げ45°(b=45°)
距離 m ティルト角 °
0.5 11.3
0.6 9.5
0.7 8.1
0.8 7.1
0.9 6.3
1.0 5.7
1.2 4.8
1.5 3.8
2.0 2.9
3.0 1.9
4.0 1.4
5.0 1.1
見下げ30°(b=60°)
距離 m ティルト角 °
0.5 19.1
0.6 16.1
0.7 13.9
0.8 12.2
0.9 10.9
1.0 9.8
1.2 8.2
1.5 6.6
2.0 4.9
3.0 3.3
4.0 2.5
5.0 2.0

 

焦点距離:45mm 繰り出し量を5mmとしてAを50で計算 

見下げ60°(b=30°)
距離 m ティルト角 °
0.4 4.1
0.5 3.3
0.6 2.8
0.7 2.4
0.8 2.1
0.9 1.8
1.0 1.7
1.2 1.4
1.5 1.1
2.0 0.8
3.0 0.6
4.0 0.4
5.0 0.3
見下げ45°(b=45°)
距離 m ティルト角 °
0.4 7.1
0.5 5.7
0.6 4.8
0.7 4.1
0.8 3.6
0.9 3.2
1.0 2.9
1.2 2.4
1.5 1.9
2.0 1.4
3.0 1.0
4.0 0.7
5.0 0.6
見下げ30°(b=60°)
距離 m ティルト角 °
0.4 12.2
0.5 9.8
0.6 8.2
0.7 7.1
0.8 6.2
0.9 5.5
1.0 4.9
1.2 4.1
1.5 3.3
2.0 2.5
3.0 1.7
4.0 1.2
5.0 1.0

 

焦点距離:24mm 繰り出し量を1mmとしてAを25で計算 

見下げ60°(b=30°)
距離 m ティルト角 °
0.3 2.8
0.4 2.1
0.5 1.7
0.6 1.4
0.7 1.2
0.8 1.0
0.9 0.9
1.0 0.8
1.2 0.7
1.5 0.6
2.0 0.4
3.0 0.3
4.0 0.2
5.0 0.2
見下げ45°(b=45°)
距離 m ティルト角 °
0.3 4.8
0.4 3.6
0.5 2.9
0.6 2.4
0.7 2.0
0.8 1.8
0.9 1.6
1.0 1.4
1.2 1.2
1.5 1.0
2.0 0.7
3.0 0.5
4.0 0.4
5.0 0.3
見下げ30°(b=60°)
距離 m ティルト角 °
0.3 8.2
0.4 6.2
0.5 4.9
0.6 4.1
0.7 3.5
0.8 3.1
0.9 2.8
1.0 2.5
1.2 2.1
1.5 1.7
2.0 1.2
3.0 0.8
4.0 0.6
5.0 0.5

 

17mmに関しては割愛します。このレンズでブツ撮りをする方はまずいないでしょうから、近距離のデータは意味がないですし、中~長距離に至っては、1°未満の微妙な角度ですので、あえて表にしなくてもいいでしょう?(笑)

まあ、このような表があったところで、実際の撮影現場で、完全に平らなものばかりが並ぶことはまれです。傾向を掴む上での参考にしてください。

(なお、今回この表をまとめていて、前々回のデータの解釈が間違っていたことが分かりました。45°で8°ティルトでパンフォーカスになっていないのは、角度が多すぎたのではなく足りなかったためでした・・・7°でフォーカスがよりしっかりしていたのは何か他の条件によるもののようです・・・トホホ  従って当該記事も加筆修正しました)

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2011年2月12日 (土)

ティルト角によるフォーカス変化の実際 -中距離

前回は近距離を取り上げたので、今回はそこそこの距離の場合を実験しましょう。

110212a_2

このようなグレーチングのブリッジを被写体にしました。前回にならってカメラと被写体の関係の図も提示します。

110212b

今回は45°と30°で行います。前回は60°と45°でしたが、この距離で60°ともなると被写界深度が深いため、ティルトの必要性が薄れると判断したのと、この距離の見下ろしのためには三脚の高さが足りないのが理由です。

(前回の「近距離」では30°では角度が浅く、ティルトの効果が望めないと判断したこともご了承ください)

重ねがさねのお詫びです。

タイトルが「ティルト角によるフォーカス変化」としておきながら、前回はドンピシャの角度とオーバーした角度しか表示せず、今回はもっと端折ってピッタリの角度のみの比較です。

中間の角度では角度に従って順にピントの合う範囲が広がってくる、行き過ぎればピントの範囲は再び狭くなる、ということはご理解いただけると思います。

まずは45°

前回の文字とは違い、同じパターンの繰り返しなので、ピントを合わせたセンターと手前部分の等倍切り抜き範囲がどこなのか分かるように赤枠で表しています。
(前回同様、以下2枚の画像は大きいので小さいモニターの方はご注意ください)

201102123
◆45° 5616×3744ピクセルを 全景は約13%に縮小(左右カット)-690×150 中心部等倍-150×150 下部等倍-150×150)

つぎに30°

201102124
◆30° サイズ同上

この距離になってくると3、4°のティルトでパンフォーカスになります。

今回は予め三角関数で適切なティルト角を求め、それに従ってティルトさせました。

具体的な数値は別として、

  • 被写体距離が長くなればティルト角は少ない
  • 撮影角度が浅くなればティルト角は多い

とまとめられます。

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2011年2月 5日 (土)

ティルト角によるフォーカス変化の実際 -近距離

前回は概略で説明しましたが、パンフォーカスを得るためのティルト角は、「被写体面に対する角度」「被写体距離」の2要素で定まるため、まずは被写体距離を一定にして角度を違えて実写してみましょう。

スティルライフ撮影をイメージして、机の上に置いた印刷物をEOS5DII+TS-E90mmで撮ってみたいと思います。

110205a

 

まず最初に60°での撮影。

ティルトをさせずにノーマルで撮った画像として開放絞り(f2.8)のものをお見せします。ピントは中ほどの「Eavoy in the 1979-1983...」の行に合わせます。

なお、今回は説明に使う画像が大きいため、小さいモニターでご覧の方はご不便をおかけします(次の画像以降同じ)

20110205b2
◆f2.8 ノーマル(ティルト0°) 元画像5616×3744を1/4に縮小

次に最大絞りに近いもの(f22)です。

20110205b3
◆f22 ノーマル(ティルト0°) 元画像5616×3744を1/4に縮小

さすがに全域にはピントがきません。

次はティルトを8°にしたf11での画像

20110205b4
◆f11 ティルト8° 元画像5616×3744を1/4に縮小

ほぼパンフォーカスといえる写真になりましたが、等倍でみるとどうでしょう。

そこで、ノーマル(ティルト0°)とティルト8°で絞りを1段ずつ変えた画像を等倍も含め並べて見比べましょう。

20110205b5
◆ノーマル(ティルト0°) 5616×3744ピクセルを 全景は約13%に縮小(左右カット)-690×150 中心部等倍-150×150 最下部等倍-150×150)

原寸の部分を見ると分かる通り、センターの解像感は開放絞りでは甘く、絞りすぎると小絞りボケが出て、コントラストも低下しているのが分かります。(f32では本当の32の値まで絞りきれていない--絞りが若干大きい--ため全体に明るくなっています)

20110205b6
◆ティルト8° 同上 

8°のティルトが適切と判断したのですが、f11あたりでも甘いことがわかりました。どうやらティルトさせすぎたようです。なお、開放絞り(とそこから1段)ではノーマル時に比べセンター部分の解像感が著しく落ちているのがわかります。

若干戻し5°にするとパンフォーカスになるようです。

20110205b8
◆ティルト5° 同上 

 

ティルトした場合の被写界深度がノーマルの場合と比べ何段分違うかを目視で並べた表にしました。また45°で撮ったものも同様に並べました。

20110205b7

このように、パンフォーカスを得る適切なティルト角を超えると前後が再びデフォーカスするることがおわかりいただけるでしょう。(2011.02.19: 上の一覧で45°は8°のティルトでも不足することが計算で求められましたので7°のデータは「参考」とさせていただきます)

ティルトを調整してパンフォーカス写真を撮るのは、商品写真などで使い、今まで経験上で「このぐらい」って調整していたのですが、今後はデータに基づいた調整をしようと思います。

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