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2012年10月 7日 (日)

TS-E90mm F2.8でマクロ撮影 -3

20121006a

前回、「エクステンションチューブをつけることのメリットがいまいちピンとこない」とのコメントをいただきました。確かにマクロレンズのほうが(まさにそのために作ってあるので)、何倍も使い勝手がよいのは確かです。

また、上の写真のようにとんでもなく全長が伸びるのも困ったものです。写真はエクステンションチューブEF25を2個、EF12を1個つなげたものですが、これでやっと等倍撮影。全長180mmにもなり、同じ等倍撮影ができるEF100マクロの1.5倍も長い「玉」になってしまいます。

しかし、シフトやティルトの機能が引き続き利用できることがTS-Eレンズの大きなメリットです。

 

【シフト】

20121006b1 このTS-E90mmは11mmのシフトが可能になっています。ただ今まで詳しい説明を省いていましたが、これは「無限遠時」のシフト量です。実は最近接時(0.5m時)には見かけ上、もっと大きなシフトが得られます。下のように画面の半分以上(横位置時)のシフトが得られるのです。

20121006b2

これが、エクステンションチューブを使用すると、もっと大きな移動量(あくまでも画面上での移動量)が得られます。次の写真は、上と同じものを、EF25×2+EF12で撮ったものです。

20121006b3

 

【ティルト】

ティルトでパンフォーカスを得るのは、「撮影距離」「レンズ主面と撮像面の距離」「見下げ角度」で決まり、撮影距離が近い・レンズ-像面距離が遠い・角度が浅い ほど不利(TS-Eレンズでは追い切れない)であることを 「パンフォーカスを得るティルト角の計算」 でご紹介しました。

さて、エクステンションチューブを使用すると、撮影距離、レンズ-像面距離とも不利になります。完全なパンフォーカスを得るのはチューブを繋ぐほど難しくなります。以下、かなりの見下げ(見下げ角60度)で実験した3状態(EF25で2距離、EF25×2+EF12で最近接)です。(各々クリックで拡大します)

20121006c

20121006d

20121006e

EF25の最遠距離時はチューブを付けない最近接時とほぼ同じ状態ですので、ほぼ計算(一覧表)通り、ティルト7度でパンフォーカスが得られています。しかしそれ以上の延長時および近接時では(かなり真俯瞰に近い印象の)60度でもパンフォーカスは得られません。浅い角度での撮影ではもっと条件が悪くなりますが、それでも絞り何段か分の被写界深度が得られることは確かです。

20121006f 右の写真はTS-Eレンズを持たない頃、kissDNにEF-S60mmマクロでf/32まで絞り込んで撮ったマイクロチップです(チップ表面には型番等のプリントがありますが都合により消してあります)が、奥の稜線にはしっかりしたピントがきていません。

その時は印刷時に切手ぐらいの大きさだったのでクライアントも問題ないと判断しましたが、これが「抜き」でもっと大きな扱いだったらちょっと使えません。

その時、「今度こんな仕事が来たらヤバイな」と思いフルサイズ、TS-Eに移行したのですが(理由はそれだけじゃないですよ 笑)、結局それ以来、このような小さなものでパンフォーカスを必要とする撮影は来ていないのですが。

 

【チューブ使用時の注意】

AE撮影時は関係ないのですが、露出をマニュアルで行うときは露出補正が必要となります。チューブをつけて像面を遠ざけるので、遠くになれば光が弱まる理屈での現象であることははおわかりいただけるでしょう。以下に私の実測値を記します(計算上・理論上ではないので正確かどうかはわかりません)。

使用
チューブ
EF12 EF25 EF25
+EF12
EF25
+EF25
EF25
+EF25
+EF12
延長 12mm 25mm 37mm 50mm 62mm
補正 +0.7段 +1段 +1.3段 +1.7段 +2.3段

 

通常の撮影では、画角(被写体をどうフレームにおさめるか)と撮影距離の関係はそう難しくはありませんが、チューブを付けた近接撮影では、チューブ長さが長くなるほどピントの合う範囲(ピントリングで調節できる距離)が極端に短くなるため、そもそも被写界深度も極端に薄いことと相まってピント合わせが困難になります。

20121006g そこで使用したいのがスライドレールです。私はベルボンのスーパーマグスライダー を使っているのですが、最近ベルボンからその姉妹機で左右のスライドを省いた スーパーマグスライダー(前後のみ) というものも出ています。

ただ、アルカスイス互換のL字ブラケットを使用して縦位置で撮るとき(上のティルト実験)などこのスライダーの上にクランプを付けてカメラを縦位置にするとかなり「ヘニャヘニャ」した感じになります。ミラーアップでレリーズ使用ならば問題ありませんが、シャッターボタン使用だと「ブレるかも」といった印象です。

もしアルカスイスタイプのクランプ、プレートをお使いなら、そのシステムのレールのほうがよいでしょう。KIRKからは マクロ撮影用フォーカシング・レール や簡易的な マクロ撮影用Newロングレールプレート が出ています。

マニュアルフォーカスでただでさえ扱いが面倒なTS-Eレンズですので、「マクロ目的」で購入される方はいないとは思いますが、すでにお持ちの方はちょっとの出費で応用範囲が広がることは確かです。

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コメント

今回もご自分で検証された緻密な数値付きの資料。
この手間ヒマ大変な物でしょう。敬服いたします。
「kissDNにEF-S60mmマクロでf/32まで絞り込んで撮ったマイクロチップ」・・・。
私も、似たようなことがありました。なるほど、なるほど。
今回の記事も、いずれ役立てたいと思います。
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ところで、
2011年11月5日の記事、TS-Eレンズの使い方の解説で
【ティルト/スイングの合わせ技によるパンフォーカス】の、
ピント面を斜めに傾けるイラスト図解で、私は一気に理解が進みました。
その半年後にTS-E90mm購入にいたるのですが
購入直後から実戦に投入できたのは
前述したピント面のイラストのおかげです。感謝いたします。
サンプル写真がヤマハのマリオ・ベリーニ デザインのあれだし。
懐かしいですね。
『工業デザイン』というジャンル(職種)があるということを
意識した始めての製品だったような気がします。

ありがとうございました。

投稿: pink | 2012年10月 9日 (火) 21時05分

pink様、今回もコメントありがとうございます。
少しはお役に立てたでしょうか(笑)。

ブツ撮りをやっているなら、皆さん同じような経験ありと思いました。特にpink様も私と同じように、制作物表現の一手法として「写真」を考える立場でしょうから、なおさらでしょう。

このブログ、実は自分用の「覚書」あるいは「データ集」的な意味合いが強いのですが、こういった情報は皆さんと共有できるのではないかと思っていて、pink様のような方に見ていただけると、「やった甲斐があった」と感じられます。

ヤマハのTC-800がベリーニのデザインなのもご存じなので、年も結構近いのだとは思いますが、お互い、まだまだ表現を突き詰めていきたいですね。

何かリクエストなどありましたらまたコメントください。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: seimas | 2012年10月 9日 (火) 22時27分

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